まず結論 — 3点
プロップ取引で最も誤解されやすい費目が、「返金可能(refundable)な手数料」と「リセット」です。どちらもセーフティネットのように聞こえますが、多くのトレーダーが思っているようには機能しません。
- 「返金可能な手数料」はほぼ現金返金ではない。多くの業者では報酬への上乗せ(reward reimbursement)であり、合格時ではなく資金提供口座で出金に到達して初めて回収できる
- リセットは無料のやり直しではなく、ほぼ有料の商品。目安は新規試験料の30〜60%で、回数も2〜3回に制限される流れ
- ルール自体が後から変わりうる。返金も報酬も遡及的に無効化されることがあり、2025〜2026年には既存口座保有者向けに条件を変更した業者もあった。試験料の安全性は「自分が縛られるルールブック」次第
以下、各論点を一次情報または信頼できる出典に紐づけて整理します。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資・法務・税務の助言ではありません。
プロップの手数料の仕組み — エントリー料と「返金可能な手数料」
チャレンジを購入するとき、通常は一括で前払いします。そのうち戻ってくる分があるかどうかは、読み飛ばしやすいラベルで決まります。
エントリー料(「評価料」「チャレンジ料」とも)は挑戦そのものの価格です。いわゆる返金可能な手数料は、同じ支払いに条件付きの約束が付いたもの。あとで業者が返してくれますが、下流の条件(通常は資金提供口座での出金到達)を満たした場合に限ります。その手数料がエスクローで待機しているわけではありません。あなたが立て替えて取引し、返金はのちの報酬の一部として処理されます。
この違いが重要なのは、「refundable(返金可能)」というマーケティング用語が返金保証を連想させるからです。実際には、気が変われば取り戻せる預け金ではなく、成功して初めて得られるリベートに近いものです。
初回出金時に返金されるモデル — 業界標準を解説
主要各社で支配的なのが初回出金時返金(refund on first payout)という構造です。評価試験に合格したときではなく、資金提供口座での最初の利益出金にまとめて返金されます(FTMO公式FAQ)。
FTMOは、2ステップチャレンジにおいて手数料がトレーダーの最初のReward(利益)出金と一緒に返金されると明記しています。チャレンジに合格した瞬間ではありません(FTMO公式FAQ)。信頼できる比較サイトの試算では、100Kの2ステップ口座の約540ユーロの手数料が初回出金と一緒に戻り、3,000ドルの出金が実質「3,000ドル+540ユーロ返金」になる、とされています。金額はあくまで目安として扱い、FTMOの最新料金で確認してください。
業者側の論理は単純です。初回出金時にのみ返金するということは、「合格」かつ「出金可能な利益を実際に生み出せた」トレーダーにだけ手数料が戻る、ということ。合格しても出金に到達しなければ返金は発生しません。つまり目玉の「返金可能な手数料」は実在しますが、多くの購入者が思うより下流にゲートがあります。費用が静かに漏れる箇所の全体像はプロップファームの隠れコストで解説しています。
FTMOのケース — 2ステップは返金、1ステップは返金なし
FTMOのポリシーで最もよくある読み違いが、「どの商品でも手数料が返る」という思い込みです。実際は違います。
- 2ステップチャレンジ: 一括の手数料は、資金提供口座での最初のRewardと一緒に返金される(FTMO公式FAQ)
- 1ステップチャレンジ: エントリー料は合格しても返金されない(FTMO公式FAQ・1ステップ専用ページ)
これは、「業者単位」ではなく「購入する商品単位」でFAQを読むべき理由のきれいな例です。同じブランド・同じダッシュボードでも、選ぶ評価ルートによって返金の結果が真逆になります。ルート自体を比較したい場合は1ステップ・2ステップ・即時資金提供の違いを、FTMOの詳細はFTMOを参照してください。
本当の返金と「報酬への上乗せ」— 7日間の落とし穴
本当の現金返金(カードに返ってくる)と、報酬への上乗せ(手数料が利益出金に加算される)には明確な違いがあります。多くの「返金可能な手数料」は後者です。
FundedNextのポリシーはこの線引きを明示しています。本当に現金が戻る唯一の期間は購入から7日以内、かつ一度も取引していない場合だけで、取引を開始した瞬間に返金不可となります(FundedNextヘルプセンター)。それ以降、手数料を取り戻す手段は「返金申請」ではなく「資金提供口座での出金到達」になります。
タイミングは購入日によっても変わります。FundedNextは2026年に返金タイミングを変更しました。2026年1月12日より前に購入したStellar 1ステップ口座は初回のPerformance Rewardで返金されますが、同日以降に購入した口座は3回目のPerformance Reward出金でしか返金されません(FundedNextヘルプセンター。最新条件は公式ページで要確認)。同じ商品でも、購入時期だけで同額の手数料を待つ期間が大きく変わりうるということです。
FundedNextについて押さえておきたい点をもう少し:
- 25ドルのcTrader/Match-Trader利用料は常に返金不可。業者ではなくプラットフォーム提供元へ直接支払われるため(FundedNextヘルプセンター)
- FundedNextは初回出金時に、手数料返金とは別枠のチャレンジ報酬も提示している。割合や計算方法は商品ごとに異なるため、あてにする前に最新の数字を公式ヘルプセンターで確認すること(FundedNextヘルプセンター。公式サイトで要確認)
業者全体の条件はFundedNextを参照してください。
無料リセットと有料リセット — 実際に払う額
リセットとは、評価試験(先物系の一部モデルではアクティブなサブスク口座)を初日の状態に戻し、新規チャレンジを買い直さずに再挑戦できるようにする仕組みです。マーケティングでは無料・些細なものに見せることもありますが、たいていそのどちらでもありません。
リセットはほぼ有料で、目安は新規試験料の30〜60%です(The Prop Firm Guide)。100Kの口座ではおおむね50〜150ドル。新規評価を買い直すよりは安いものの、無料からはほど遠く、2回目以降は割安感も薄れます。
本当に無料のリセットは、常設ポリシーというより主に季節限定キャンペーンとして存在します。たとえばFTMOは季節ごとに無料リセットのキャンペーンを行うことがあります(The Prop Firm Guide。実施状況はFTMOで要確認)。「無料リセット」は恒久的な機能ではなく、確認すべき期間限定オファーと捉えてください。
口座サイズ・業者別のリセット料金
具体的な数字です。ただしプロップの料金は頻繁に変わるため、支払い前に各社のページで必ず確認してください。
- Topstep: リセットは月額リビル料と同額。Standardパスで約49ドル(50K)、99ドル(100K)、149ドル(150K)(Topstepヘルプセンター。最新料金は要確認)
- Tradeify: 100Kリセットは約95ドル、初回評価は約169ドル(The Prop Firm Guide)。TradeifyとTradeifyレビューも参照
- FTMO: リセットは原則有料で、季節限定で無料リセットのキャンペーンあり(The Prop Firm Guide。FTMOで要確認)
- FundedNext: 口座ファミリーごとに条件が異なるため、リセットの可否と料金は公式ヘルプセンターで確認
リセットが何を戻すかは具体的に決まっています。Topstepのリセットは、Trading Combineを初日の開始残高・最大損失制限・コンシステンシー目標・取引日数に戻し、リビル日を30日先送りします。1口座あたり1日2回までで、アクティブなサブスクリプションでのみ機能します(Topstep公式ヘルプセンター)。便利な例外もあり、Topstep口座がリセット前に利益状態で、その後に取引していない場合、サポートが新しい利益目標を調整することがあります(Topstep公式ヘルプセンター)。Topstepを含む先物系の全体像は先物プロップファーム入門を参照してください。
2026年の大きな流れとして、多くの業者がリセットを1口座あたり2〜3回程度に制限し、以前の「無制限リセット」から締め付けを進めています(The Prop Firm Guide。各社で要確認)。複数回リセット前提のプランなら、まず上限を確認してください。
リセットか買い直しか — 払う前に計算する
重要なのは「リセットがいくらか」だけでなく、「リセットが妥当か、撤退や買い直しの方が良いか」です。2つの観点があります。
1つ目はブレイク(規定違反)との前後関係です。ブレイク前に購入するリセット(口座がまだ生きているうちのクリーンな再スタート)は、ブレイク後の割引リトライより一般に有用です。ブレイク後は割引リトライを提供する業者もあり、自動適用されることもありますが、その割引はすでに挑戦権を失った後にしか来ません。割引の有無や割引率は、あてにする前に各社のページで確認してください。
2つ目はリセット費用と新規評価の比較です。リセットが新規料金の30〜60%なら、買い直しより安いのが普通です。ただしそれは、戦略と口座サイズが変わらず、損失が構造的な問題ではなく分散(運)だと本当に思える場合に限ります。同じ壁に何度もぶつかるなら、同じプランを再スタートするために繰り返し払う方が高くつきます。コンシステンシールールやデイリーロスと最大ドローダウンの違いは、口座が死ぬよくある構造的原因です。そこを直す方がリセットより効きます。
目安として、繰り返すリセットの合計が新規評価2〜3回分に近づいてきたら、それはもうリトライの購入ではなく、業者への資金提供です。基本料金とリセット条件は比較データで並べて見られます。
返金・報酬を無効にするもの — コンシステンシールールと隠れた監査
試験料の返金と報酬出金は、同じ弱点を共有します。業者が出金時にあなたの全取引履歴を監査することで、どちらも遡及的に無効化されうる、という点です。評価に合格してもお金は確定せず、出金時の監査こそが否認の起きる場所です。
業界横断で報告される主なトリガー(Thor Trade Copier。各社のルールブックで要確認):
- コンシステンシールール違反 — 1日の利益が総利益に占める割合の上限を超える
- 口座間ヘッジ — 複数口座で反対ポジションを取り評価を不正に操作する
- 同一約定や共有IPで検知されるコピートレード — 意図しないミラーリングでも検知に引っかかりうる
- 禁止商品 — ルールブックが除外するシンボル・商品の取引
- KYC未完了 — 出金申請時に初めて表面化する本人確認の不備
実務的な教訓は、監査は登録時ではなく出金しようとした瞬間に起きる、ということです。そのときに返金が静かに消えることもあります。リスクの分類はプロップファームの詐欺・リスク、業者の見極めはプロップファームの選び方を参照してください。
ルールの遡及変更と、実際のトレーダー損失
最も気の重いリスクは、取引を始めた後にルールブック自体が変わりうることです。2025年12月、FundingTicksが既存口座保有者向けにルールを変更し、トレーダーは最大で約21,000ドルの利益が削除されたと報告しています(Thor Trade Copier。一次報道で要確認)。個々の数字の真偽はともかく、構造的な論点は揺るぎません。未規制の領域では、合意した条件が、必ずしも自分が縛られる条件とは限らないのです。
だからこそ、返金やリセットの計算を業者の安定性と切り離して評価してはいけません。手厚い返金ポリシーも、業者がそれを書き換えたり、出金を遅らせたり、閉鎖したりすれば無価値です。実際にどれだけ起きてきたかはプロップファーム閉鎖の歴史と閉鎖トラッカーを参照してください。業者の自己資金で取引しているのか、シミュレーション口座なのかも、約束の堅牢さを左右します。資金提供口座とシミュレーション口座の違いを参照してください。
チェックリスト — チャレンジ料を失わないために
「refundable」がほぼ現金返金を意味せず、ルールも動きうる領域では、あなたの防御は支払い前の自分の確認だけです。
- 購入する商品のFAQを正確に読む。 返金条件は同じ業者でも商品で異なる(FTMOは2ステップ返金、1ステップは返金なし)
- 本当の現金返金の期間を把握する。 あったとしても通常は短く(FundedNextは7日)、取引した瞬間に無効
- プラットフォーム手数料とチャレンジ料を分ける。 プラットフォーム料(例:FundedNextの25ドル)は第三者に支払われ、返金されない
- 返金タイミングの発生条件を確認する。 初回出金か3回目出金かで数週間の差になる(FundedNextの2026年変更)
- リトライに頼る前にリセットの上限と料金を確認する。 多くの業者が2〜3回に制限。リセットは新規料金の30〜60%で見積もる
- 可能ならブレイク前にリセットする。 クリーンな再スタートはブレイク後の割引に勝る
- 戦略をルールブックと事前照合する。 コンシステンシールール、ヘッジ、コピートレード、禁止商品、KYCが定番の出金キラー
- 業者の安定性を重く見る。 返金ポリシーは、それを守る業者があってこそ。長い運営実績と透明な支払いを優先(支払いの透明性)
まとめ
2026年において、「返金可能な手数料」も「無料リセット」も、保証ではなく条件付きオファーとして読むのが正解です。返金の多くは資金提供口座での出金にゲートされた報酬への上乗せであり、リセットの多くは上限が締まりつつある有料商品。そして返金も報酬も、監査やルール変更で取り消されうる。試験料を守れるトレーダーは、商品ごとの条件を正確に読み、プラットフォーム料とチャレンジ料を分け、返金の見出しと同じくらい業者の安定性を重視する人たちです。
このページは業者のポリシー動向に合わせて更新します。引用される場合は、出典として本ページ(PROP NAVI)へのリンクをお願いします。
長期の運営実績を持つ代表2社
返金やリセットの条件は、それを守る業者が存続していて初めて意味を持ちます。データ上「運営10年以上+信頼度: 高」を満たす2社を挙げます(評価基準)。
FTMO — 業界最大手の運営実績
運営11年(2015年〜)。2ステップチャレンジの手数料は初回Rewardと一緒に返金され、1ステップは返金されません(FTMO公式FAQ)。商品ごとの条件を読むべき好例です。
The5%ers — 10年運営の老舗
運営10年(2016年〜)。Instant Fundingの先駆けで、試験料を払う評価をそもそも省きたい人向け。