ドローダウンが本当に測っているもの:口座を終わらせる線

資金提供口座にも評価口座にも、エクイティの下に1つの数字が横たわっています。損失限度です。これに触れた瞬間に口座は終了します。評価なら失格、資金提供口座なら閉鎖です。口座を維持できるかどうかは、エントリーの巧拙よりも、この線がどう計算されるかでほぼ決まります。

種類は2つ。静的(最大)ドローダウンは開始残高に固定された下限です。トレーリング・ドローダウンは口座が高値を更新するたびに上がる下限です。違いは机上の話に聞こえますが、ドルで計算すると一変します。まったく同じ「勝った日」が、ある業者では合格、別の業者では失格になり得るのです。本稿では各社の公式ヘルプを一次情報に両者を整理し、それぞれをどう立ち回るかまで示します。

本稿は情報提供を目的とし、投資助言ではありません。

静的(最大)ドローダウン:決して動かない固定の下限

静的ドローダウンは2つのうち単純なほうです。下限は初期残高から一度だけ設定され、その後は動きません。利益が出ても、ドローダウンが進んでも動きません。

FTMO が分かりやすい例です。Maximum Loss ルールでは、エクイティはいかなる時も初期残高の90%を下回ってはならないと定められています。利益をいくら積み上げても下限が動かない、固定の10%最大損失です(出典:FTMO Academy)。10万ドル口座なら線は9万ドルで、8,000ドルの含み益が出ても9万ドルのままです。積み上げた利益はそのままバッファになります。

静的ドローダウンの業者は通常、最大損失とは別に日次の限度を併設します。FTMO の Maximum Daily Loss は初期資金の5%で、毎日 CE(S)T の真夜中に「前日真夜中の残高 − 初期資金の5%」として再計算されます(出典:FTMO Academy)。The5ers も同様で、High Stakes プランは初期残高からの最大損失を10%に抑え、5%の日次ドローダウンを「前日の終値エクイティと残高のうち高いほう」から測ります(出典:The5ers ヘルプセンター)。この併設の詳細は日次損失 vs 最大ドローダウンで解説しています。

トレーリング・ドローダウン:エクイティを追って上がる下限

トレーリング・ドローダウンは動きます。口座が高値を更新するたびに損失限度が同額だけ上がり、ピークから一定の距離を保ちます。儲ければ下限も一緒に上がる。問題は、一度上がった下限は、利益を吐き出しても下がらないことです。

この非対称性がすべてです。トレーリングでは、利益で1日を終えても失格になり得ます。すでに手放した日中ないし過去の高値を追って、下限が上がってしまったからです。稼いだと思ったバッファは、自分ではなく下限に貸し出されていたのです。

トレーリングの厳しさを決める問いは2つ。どの瞬間を基準に追うのか(日中のピークか、その日の終値か)、そしていつ追うのを止めるのか(ロック地点)。この2つの答えが分かれば、ルールは理解できます。

イントラデイ vs エンドオブデイ:タイミングが運命を決める

ここが最も多くのトレーダーを不意打ちする区別です。

イントラデイ・トレーリングは、セッション中のあらゆる瞬間に達した最高残高を追い、しかも建玉の含み益を含みます。Apex Trader Funding はまさにこれを明文化しています。トレーリングの基準は口座の日中最高残高、つまり建玉の含み益を含むピーク残高を追うため、ポジションが新高値を付けた瞬間に、何も決済していなくても下限が即座に上がります(出典:Apex ヘルプセンター)。確定しなかった一時的な高値でも、下限は恒久的に上がります。

エンドオブデイ(EOD)トレーリングは、その日の終わりの確定残高からのみ下限を引き上げます。Topstep の Maximum Loss Limit(MLL)はこの方式です。午前11時に1,500ドル勝っていて、それを全部吐き出しても、MLL は動きません。終値しか見ないからです(出典:Topstep ヘルプセンター)。MyFundedFutures の Core と Pro は、別途の日次損失限度を持たない3%の MAX EOD トレーリングを採用しています(出典:MyFundedFutures ヘルプセンター)。

種類追う基準含み益の瞬間高値も数える?採用例
イントラデイ・トレーリング含み益込みのあらゆる瞬間の最高残高数えるApex Trader Funding
エンドオブデイ・トレーリングセッション終了時の確定残高数えないTopstep、MyFundedFutures(Core/Pro)
静的/最大初期残高からの固定数えないFTMO、The5ers

イントラデイ版は明確に厳しいです。Apex では、新高値を付けた勝ちトレードに買い増し、その後に反転すると、守るべき下限はすでに上がっています。高値の基準は確定していないエクイティに付いたものだからです。Topstep なら、同じ日中の往復は終値まで限度に影響しません。

ドル建ての具体例:勝った日でも失格になる仕組み

数字にすると明確です。以下はすべて各社の公式資料に基づく値です。

Topstep・50K Combine(EOD トレーリング)。開始残高50,000ドル、MLL は48,000ドル。500ドルの利益で MLL は48,500ドルへ上昇。その後の500ドルの損失でも MLL は48,500ドルのまま(決して下がりません)(出典:Topstep ヘルプセンター)。Topstep が公開する MLL の金額は、50K口座で2,000ドル、100K口座で3,000ドル、150K口座で4,500ドルです(出典:Topstep ヘルプセンター)。

Apex(イントラデイ・トレーリング)。50,000ドル口座では、トレーリングの基準は含み益を含む日中最高残高を追います。建玉がエクイティを新高値まで押し上げたとすると、下限はリアルタイムで一緒に上がります。その後に価格が反転し、エクイティがいずれかの瞬間にその上がった基準に触れるか下回れば、すべての建玉が自動清算されます。評価は即座に失格、Performance Account は即座に閉鎖です(出典:Apex ヘルプセンター)。建値まで戻して管理するつもりだったトレードで、失格が起きます。

MyFundedFutures(3% MAX EOD)。ドローダウン判定時、終値時点で含み損も計上されます。つまりセッション終了時にまだ開いている建玉は、確定損益だけでなくコンプライアンス判定に含まれます(出典:MyFundedFutures ヘルプセンター)。「様子見で持ち越す」トレードは、決済したものとしてドローダウン判定にかけられます。

3社に共通する教訓は、トレーリングでは確定していない利益でも下限が動き得て、イントラデイ・ルールでは即座に動くということです。

どの業者がどちらか:Apex・Topstep はトレーリング、FTMO・The5ers は静的

主要業者をドローダウンの種類で整理します。

  • イントラデイ・トレーリング:Apex Trader Funding(Apex vs MyFundedFutures)。
  • エンドオブデイ・トレーリング:Topstep、および MyFundedFutures の Core/Pro(MyFundedFutures のルール解説)。
  • 静的/最大:FTMOThe5ers
  • 取引前に要確認:Fintokei は日次損失限度と最大損失限度の両方を計算します。各プログラムの静的・トレーリングの具体的な仕組みは、取引前に公式FAQで確認してください(出典:Fintokei FAQ)。

ドローダウンの種類は枝葉ではありません。プロップファームの選び方で最初に詰めるべき項目の1つであり、選ぶ評価構造(1ステップ vs 2ステップ vs インスタント)とも絡みます。これらの重み付けは評価基準をご覧ください。

「ロック」地点:トレーリングが止まるとき

多くのトレーリングは永遠には追いません。基準が凍結し、以後は静的な下限のように振る舞う到達点が定められています。

  • Apex:イントラデイ・トレーリングの基準は「開始残高+100ドル」に達するとトレーリングを止めます。例えば50,000ドル口座では50,100ドルで凍結し、それ以降は下限が上がりません(出典:Apex ヘルプセンター)。
  • MyFundedFutures:トレーリングは「開始残高+100ドル」(3%の距離に加えて)でロックします。具体例は50K口座で52,100ドル、100K口座で103,100ドル、150K口座で154,600ドルです(開始+3%+100)(出典:MyFundedFutures ヘルプセンター)。
  • Topstep:MLL は残高が開始残高に達すると恒久的にロックします(出典:Topstep ヘルプセンター)。

なぜ重要か。ロックまで下限はエクイティを追い続けますが、ロック後は以降の利益が初めて純粋なバッファになります。自分の正確なロック地点を知れば、口座の序盤がどれだけ攻撃的かが分かります。

トレーリングを自滅せず立ち回る方法

失敗の型は予測できるので、防御も予測できます。

  • 確定していない高値は脆いものとして扱う。とくに Apex のようなイントラデイ・トレーリング口座では、確定しなかった高値でも下限は恒久的に上がります。サイズと損切りは、現在のエクイティではなく高値基準を前提に置きます。
  • ロックまでの前進を確定させる。基準は「開始残高+100ドル」付近で凍結するため、そこをきれいに超えればルールははるかに寛容になります。規律はここに前倒しで投入します。
  • EOD 口座ではセッションの終値を意識する。Topstep と MyFundedFutures では終値が判定対象であり、MyFundedFutures では終値時点で建玉も計上されます。緩い建玉を EOD のスナップショットへ持ち込まないこと。
  • 稼いでいない「バッファ」で取引しない。トレーリングではバッファが上方向へ消えて下限に化けます。サイズは現在のエクイティと現在の基準の距離に合わせ、日中の最高値に合わせないこと。

静的ドローダウンを立ち回る方法

静的な下限は別のリズムを報います。

  • 序盤に本物のバッファを作る。FTMO では10万ドル口座の9万ドルの線が決して上がらないため、確定した利益の1ドルごとが恒久的な余地になります(出典:FTMO Academy)。イントラデイ・トレーリングと違い、利益が文字どおり安全を買います。
  • 別建ての日次限度を尊重する。静的ドローダウンの業者は通常、最大損失と並行して日次損失限度を設けます。FTMO は5%で毎日真夜中に再計算(出典:FTMO Academy)、The5ers は5%の日次を「前日の終値と残高のうち高いほう」から測ります(出典:The5ers ヘルプセンター)。ここで実際に口座を終わらせるのは、静的な最大ではなく日次の上限であることが多いです。
  • 日次リセットが残高基準かエクイティ基準かを読む。持ち越し建玉の扱いが変わります。

税務メモ:報酬は所得、ドローダウンのルールはそうではない

ドローダウンの仕組みは口座を維持できるかを決めるだけで、報酬を受け取った後に何を納めるかとは無関係です。米国では、独立請負人に分類されるトレーダーへのプロップ報酬は通常の自営業所得であり、15.3%の自営業税(社会保障税12.4%+メディケア税2.9%)の対象です。2024年の社会保障税の賃金ベース上限は168,600ドルでした(出典:IRS)。自営業税は Schedule SE(Form 1040)で申告し、純自営業所得が400ドル以上になると納税義務が生じます。さらに、申告区分に応じた125,000〜250,000ドルの基準を超える部分には0.9%の追加メディケア税がかかります(出典:IRS)。

皮肉にも、報酬を多くロックインするトレーリング口座は、より大きな納税額も積み上げています。織り込んでおきましょう。詳細は米国のプロップファームと税金で扱っています。本節は情報提供であり、税務助言ではありません。CPA にご相談ください。

まとめ

静的とトレーリングのドローダウンは、同じ問い(口座が終わる前にエクイティはどこまで落ちられるか)に、まったく違う答えを返します。静的な下限は利益を恒久的なバッファに変えます。トレーリングの下限はそのバッファを損失限度に貸し出し、イントラデイ・トレーリングはそれをリアルタイムで、確定しないかもしれない利益に対して行います。チャレンジを購入する前に、業者の公式資料から3点を確定させましょう。静的かトレーリングか、イントラデイか EOD か、どこでロックするか。この3つの答えは、上に積むどんな手法よりも多くの口座の死を予測します。

このページは各社のルール改定に合わせて更新します。引用される場合は、出典として本ページ(PROP NAVI)へのリンクをお願いします。

おすすめの業者

自分に合うドローダウンの種類は取引スタイル次第です。長期で検証可能な実績を持つ3社を挙げます。

FTMO — 静的な最大損失

下限が動かない固定の10%最大損失に、5%の日次限度を併設(出典:FTMO Academy)。利益が本物のバッファになるため、エクイティを着実に積む人に向きます。

FTMO 公式で見る

The5%ers — 静的/絶対ドローダウン

初期残高からの絶対ドローダウンで、日次は「前日の終値と残高のうち高いほう」から測定(出典:The5ers ヘルプセンター)。Instant Funding の先駆けで、評価を経ずに始めたい人向け。

The5%ers 公式で見る

Fintokei — プログラムごとに仕組みを確認

日次損失限度と最大損失限度の両方を計算します。選んだプログラムの静的・トレーリングの挙動は、取引前に FAQ で確認してください(出典:Fintokei FAQ)。

Fintokei 公式で見る

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